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* 男子は松島 暁人、女子は野口啓代が優勝。
* 男子の年間優勝は渡辺数馬。女子は野口啓代が全勝優勝を飾る。渡辺は2連覇。野口は一昨年に続き、2回目の年間チャンピオン。
リザルト(PDF)
B-Session2006最終戦となるA5・THE NORTH FACE カップが2月4日、5日の両日、神奈川県相模原市のストーンマジックで開催された。言うまでもなく国内最大規模のボルダリング・イベントだ。今年は各カテゴリ合計で345名。これは子供(キッズ)からエキスパートまで全て合わせた数だが、"大人"だけでも271名(男子224名、女子47名)という途方もない参加者数である。昨年は諸般の事情で開催されなかったが、もう一つのマンモス大会プラナカップと同様、全体的にコンペが今ひとつ低調に思われる中でこれだけの人数が参加するというだけで評価にあたいするだろう。
1日目は、エキスパート以外の男子とキッズ、2日目はエキスパート男女イコールB-Sessionと、女子ミドル、エントリー(ビギナー)と言う日程構成にも、この人数をさばくための苦労がうかがわれる。進行は今年も、予選はセッション、決勝は盛り上がりを考えてサドンデスという独自のルール。また人数の多い男子ミドル、エキスパートは今年は3ラウンド制となった。こうすることで予選からシビアな課題となることを避け、参加者にそれなりに楽しんでもらおうという配慮だろう。
さて各カテゴリの総括を、まずキッズから。この2、3年、ジュニアオリンピックカップにしても、JFAユース選手権にしても選手のレベルは以前にも増して急速に向上している。日本の将来のクライミング界を考えると、頼もしい限りだ。が、しかし、中には妙に勝敗にこだわる向きがあるように聞く。キッズクラスを設定した本来の趣旨は、勝ち負けを度外視してみんなで楽しく登ることにある……とこれは平山が雑談の時に漏らしたことである。「コンペ」である以上、勝ち負けはつきまとうのだが、小学生の時から勝ち負けにこだわることが良いことか否か?一考の余地があるのではないだろうか。
次いでエントリーとミドル。エントリー(ビギナー)は、「コンペに出てはみたいけどいまいち踏み切れない」という層の受け皿として大事なところだろう。自己申告制とは言え、さすがにこのクラスに勝ちを狙ってエントリーするコンペ未経験上級者はあまり聞かないし。それに対してミドルはやはり問題ありと言わざるを得ない。毎年優勝する選手のレベルは、どう考えても「ミドル」の範疇にはない。今年も男子の決勝課題(これは課題を見ただけでわかる)や、女子のスーパーファイナルでそれがわかる。女子は決勝で決着がつかず、エキスパート女子の第1課題を使用したのだが、優勝した内海則子はこれを終了点間近まで登っている。エキスパート女子の完登は一人。数字的には完登を逃したエキスパートの3選手に劣るが、彼女らがフレッシュな状態だったのに対して、すでにミドル決勝2課題を登った上での成績であることを考えれば、エキスパートの上位選手と同等の力を持っていると見ておかしくない。余談だが内海の登りは、ひたすらスタティックなものだった。また、ムーブの読みも実に的確。他の選手と実に好対照で、こうした登りをボルダリングコンペで見ると逆に新鮮な印象を受ける。
さて、これも平山との雑談の中で出た話だが、ミドルの予選上位はそのままエキスパート送りにしたらどうか、という考え方もある。「正しくない」ミドルの存在は、セッターにも負担が大きい。「レベルは高いがコンペ経験はない」人がミドルに申し込む気持ちは無論理解できるが、そんな「自信はないが実力はある」むきのためにも、そうした対応は有効ではないかと思うがいかがだろうか。
そしてエキスパート。まず女子だが、こちらは年間優勝がすでに確定しており、後は野口啓代が完全優勝を決めるか他の有力選手が一矢を報いるかと言うあたりがポイント。予選では尾川智子が16課題を全完登してトップ通過、これに野口、真達朋子と続く。決勝1課題目も尾川が唯一完登し高度順に4名が第2課題へ進むが、この2課題目がくせ者。ルーフ右側の垂壁と前傾壁のコーナーの足が切れたマントルという、いかにも設定者(飯山健治)好みのトリッキーな課題。3選手が完登したものの、これで相当に力を吸い取られた様子。最終課題では回復力と勝負強さが問われる結果になったようで、野口がただ一人の完登で優勝を決めた。
一方の男子は京都の高校生 清水淳が年間ランク首位を走るが、2位の渡辺数馬とのポイント差は少なく充分逆転の余地がある。また今年度は各大会で、有力選手の何人かがスタッフに回って欠場しているが今回は全員参加。それに加えて韓国からディフェンディング・チャンピオンのソン・サンウォン(孫祥源)ら3名も参加とあって、ハイ・レベルの闘いが予想された。
予選は全体に易しめだったようで、7課題完登+αが上位進出ラインとなった。続く準決勝はうってかわって挑戦的な設定。全てを完登したのは松島暁人一人、3課題完登はなく2完登が3人という結果で、セッター陣はこの段階できっちり振り分けることを狙ったようだ。韓国勢もここで姿を消してしまった。ソンはコンディション的に今ひとつだったようだ。年間トップの清水もここで脱落する。
そして「人間とは思われない」人々による決勝。第1課題で最初の二人がいきなり完登した時には、これはサービスかと思ったが結局2名が完登を逃し、7名が次ラウンドへ。第2課題、第3課題と次々に絞り込まれ、残ったのは昨年ソンと優勝を争った渡辺と、松島。さすがにここは疲労も加わり厳しいところで、ここまで決勝課題を全て完登してきた二人が、取り付くたびにはじき返される。結局、手数差で上回った松島が優勝を、敗れた渡辺も清水を逆転しての年間優勝を決めた。
(Judge)
(写真:北山 真、 写真クリックで拡大画像が表示されます。)