明確な組織・ルール作りと地道な地域活動が実を結んだ事例
愛知県豊田市 豊田の岩場
2019年、愛知県豊田市冷田区にある、百間、百間楽園、天空の3エリアで登攀禁止措置がとられた。この岩場では、十数年前の地権者との口約束で了承を得て以降クライミングを続けてきたが、2019年3月に林道のある地域の自治会から、「不特定多数の人が無許可で山に入っている」との苦情が寄せられたことが発端となる。
岩場のある地域周辺は、マウンテンバイクのフィールドとしても利用されているが、「マウンバイクの愛好者は、組織を作り地域の許可を得て活動しているのに、なぜクライミング愛好者は勝手に山に入るのか」という苦言があり、他府県ナンバーの車が地域内に多数駐車されていること、岩に勝手に名前をつけ、動画をウェブ上に公開するなど、場所が特定できる状況などに対しても、不安や不快感が大きかったようだ。
JFAと地元クライマーで自治会長に謝罪を行なうと同時に、クライマーから登攀再開ための提案として、組織の設立や地域貢献活動などを申し出るが、クライミングに対する不快感は根強いものに思われた。一方で、マウンテンバイクが地域に受け入れられていることから、今後の行動いかんでは、クライミングにも可能性が残されていると、交渉を続けていく方針を立てる。
この状況のなか、同年6月に地元クライマーを中心に「豊田会議」を実施。東海地区のみならず、関東・関西から集まったクライマーが意見交換を行なった。禁止エリアの清掃活動を自治会と一緒に行なうなど、地元との交流を持ちながら、岩場の地権者様の調査、地域との協定書作成及び利用規約の作成・提出、クライマーの窓口になる会・組織の設立を目標に進めていくこととなる。
目標達成のために、まずクリアすべき大きな問題が、地権者の調査だった。地権者の特定は自治会からも提示された、いわば再開のための必須条件のひとつだったが、そのための作業には多くの時間を割くことになる。
まずは、現況と地図やトポを照らし合わせて、エリアを確定。法務局で取得した公図を切り張りして地権者マップを作成し、そこに各ボルダーの正確な位置を落とし込む作業を行なった。公図の取得に必要な費用(17万円)は、JFAから資金提供を行なった。
こうして、2019年8月下旬エリアの地権者をすべて特定。要望書、協定書案、利用規約案を作成し、自治会の確認を経て、正式に岩場は開放となった。
3エリアの登攀再開に向けては、ローカルを中心とした組織の設立、地域との互恵関係と顔が見える良好な関係作りが必須であり、それは今後の岩場の継続にも大きく関わる。クライマーの行動の結果のエリアの閉鎖は、クライミングの可能性を閉じることに他ならない。
なお、経緯については、Facebook「豊田・冷田エリアについて」(https://www.facebook.com/groups/310599376300305/)に掲載されている。
エリア情報【豊田の岩場】