小川山ガマスラブ復活プロジェクト(2019年6月)
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8年10月、日本列島を襲った大型の台風24号は、小川山にも大きな被害をもたらしました。とくに影響が大きかった、スラブ状岩壁のガマスラブでは、非常に危険な状態にあるとしてすぐに立入禁止の措置がとられ、長期にわたり登攀ができない状態にありました。
被害の発生を受けJFAで状況を確認したところ、岩場の基部にあった樹木が地面から大きく剥がされるように崩落した、非常に深刻な状態でした。
ガマスラブは、初心者や講習会などでも人気のエリアで、当初から復旧を望む多くの声が聞かれましたが、地元である川上村では、クライミング以外で利用されることのない場所であることから、村としては復旧作業を行なわないという判断をしていました。しかし、クライマーにとってのガマスラブの存在価値を考えれば、このままエリアを失うことだけは防ぎたいと、JFAが復旧作業の許可を川上村に求め交渉を始めます。
翌年5月になって、ようやく川上村から作業の許可が出ましたが、まだ大きな問題がありました。まずは、現場の状況が、通常JFAが行なっている岩場整備の規模や範囲を大きく超えており、倒木処理などに必要な工具や作業員などの確保が容易ではないこと。そして最大の問題は、資金の調達でした。
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JFAには通常の岩場整備のための活動資金がプールされていますが、この時期はちょうど各地からの活動要請が重なり、活動資金不足の状態にありました。せっかく許可がとれたのに、このままでは今シーズンもエリアが閉ざされたまま終えることになってしまいます。そこで取り組んだのが、クラウドファンディング。インターネットを通じて、ガマスラブとそこでのクライミングを愛するクライマーに広く呼びかけ、ガマスラブ復旧のための資金調達をするというものです。
クラウドファンディングのプロジェクト期間は、6月18日から7月19日までの約1か月。当初の目標金額を50万円に設定しました。「これで本当に資金が集まるのだろうか……」と半信半疑での状態でのスタートだったのですが、蓋を開けてみれば目標である50万円は初日で達成。その後も支援の輪は伸び、最終的には297名、計2,810,500円の支援が集まりました。
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資金の目途がつくまえに、すでに作業は始まっていました。なんとか今シーズン中に復旧を終わらせるには、クラウドファンディングの入金を待っていては間に合わないと判断したからです。クライマーやガイドなどのつながりで集まったスタッフや、倒木処理などの技術を持つ作業員により、連日の復旧作業が進められました。
現場は大きな根や岩が浮き上がった状態で、大量の土の絡みついた根を一つ一つ切り崩すところから始めなくてはなりません。重機が入れる場所ではないため、巨大な木の根と土の塊の間に入り込むなど、危険度の高い作業が続きました。 そして、2019年9月19日、ガマスラブの倒木処理と、ルート整備が終了し、9月28日の「クリーンクライミング in 小川山」開催日を期に、ガマスラブでのクライミングが解禁されたのです。