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参考資料

 

アクセス・ファンドにみる思想と行動

杉野 保

「Access Fund」―― アメリカのクライミング雑誌やトポを見ていると必ずと言っていいいほど目に入るこの文字。山をバックに柵が半開きになったマークと共に、と言えば思い出す人も多いかも知れない。

そのままなら「立ち入り基金」、つまりは山や岩場へ立ち入ることで生じる諸問題解決のための基金である。クライミング先進国であるアメリカには、こんな基金が10年も前から存在する。

今回の鳳来問題を期に、名前は聞いたことがあっても中身は意外に知られていないこの「アクセス・ファンド」を参考資料として紹介したい。

1. アクセス・ファンドとは?

「クライミングエリアの開放と維持、及び環境保持に取り組む、全国規模の非営利団体」
「環境保持」とは自然環境のみならず、クライミングの環境も指している。例えばアンカーの整備なども活動内容に含まれている。専従スタッフはいるものの営利は目的としていない。

2. 歴史

  • アクセス・ファンドは、アメリカン・アルパイン・クラブ(以下AAC)によって1989年に設立された。岩場への立ち入り問題解決のためには資金の介入が不可欠(土地の買収などを行うため)と、AAC内のアクセス問題委員会が判断。当初の目的は基金の積み立て、維持と、問題解決のための分配であった。
  • 基金の呼びかけと宣伝活動を行い、私有地、公有地を問わずクライマーの立ち入りに関する問題が増加しつつあることを説明した。これらの活動は、土地の買収のみならずローカルのクライミング団体への資金援助、より自然を尊重したトレイルの開拓、メジャーエリアのボランティアによる清掃、簡易トイレの設置、という形でも発展していった。
  • 1990年に専任スタッフ2人を雇い入れ、12月にAACと分離、国内のクライミング関連問題解決のため専門組織として独立する。
  • 問題解決の資金調達のため、アウトドア産業界、法人組織、小売店、会員に資金援助を呼びかけ、現在、産業界から75以上、200以上のジム、小売店、10000人以上の会員が賛同し、基金を行っている。
  • 1998年、アクセス・ファンドは国内(周辺)約100カ所のエリアの開放維持、閉鎖解除のための活動、クライマーが与える環境破壊の軽減、地主との交渉を行っている。また、機関誌「Vertical Times」、「Rock&Ice」、「Climbing」に活動内容を公表している。
  • 現在も、アクセスに関する問題解決に当たっては最前線で活動を行っている。全国に、各地方を代表するまとめ役を配置、本部はボウルダーに置き、9人の専従スタッフを持つ。

3. スタッフ

組織の健全な運営の監査を行い、方策の制定と監督を行うためのボランティアの役員会に名を連ねているのは24人。クライミング社会に通じている者ばかりで、クライミング資源の獲得、そのための行動、その後の発展、法律問題、会員確保など、役割分担が成されている。会長はマイケル・ケネディ。副会長が、フィル・パワーズ。他に有名どころでは、Conrad Anker 、Mia Axon、Scott Cosgrove、Russ Clune、Chris McNamaraなどが名を連ねている。一年に2回集会があり、任期は3年、毎年秋に選任される。

経営管理、事務処理などを行う専従スタッフは、別に9人。ニュー・リヴァー・ゴージの開拓で有名なRick Thompson も含まれている。

また、アメリカ国内を40エリアに分けて、各地区にまとめ役を配置している。

4. 活動内容

  • アクセス・ファンドはパートナーシップを最も大事なものと考えている。地主、土地の管理者、環境保護団体、クライミンググループ、アウトドア関連ビジネス、ガイドサービスなどの団体、組織と協力体制を持ち、エリアの保護、獲得を行っている。
  • リクリエーションとしてのクライミングエリアを有する公有地での管理プランの準備。国や地方職員に対し管理策の制定をサポートする。クライマー側の代表として、環境に与える悪影響を極力排除しながら、クライマーの利益の可能性を探る。また土地の管理者と協力して、トレイルの管理(開拓)、駐車場の確保、ゴミ箱・トイレの設置、看板の設置などを行う。
  • 原野の保護と野生動物の生息地確保は、今後最も課題になると思われる。そのために多くの環境保護団体と協力体制を取っている(野生保護、森林保護団体、国立公園事務局、シェラクラブなど)。問題となりやすいのは、支点問題、野生動物の保護、環境破壊など。
  • 協力体制を取るアウトドアメーカーは75以上にのぼり、エリアの開放と環境保全に力を貸している。(寄付金やギアの提供、自己責任に基づいた行動の呼びかけ、自然保護政策の支援など)

  • 200以上のクライミングジム及び販売店のスポンサードにより、年間500を越えるクライミング関連のイベントを行う。
  • 著名なクライマー(Royal Robbins, Conrad Anker, Lynn Hill, Greg Child, Randy Leavittなど) と協力し、イベントやスライドショーなどを催し基金をつのるとともに、組織の基盤固めを行う。

5. アクセス・ファンドの一般方針

  • 自然環境や地主(土地の管理者)、他のクライマーやそのエリアのユーザーに与える悪影響は最小限にしようとクライマーへの呼びかけを行う。

  • 地主との協力体制を一番に掲げ、地主との話し合いを持ち、相互合意に基づいたクライミングを行う上での取り決めを策定する。
  • 地元クライマーと地主の協議により、アンカーの設置も含めた規則を定める。それまでは、自主規制(岩と同色のハンガーを使うなど)と啓蒙活動が必要。規則はその土地の歴史的、考古学的意味、環境資源的見地も考慮に入れなければならない。また、原野や、指定エリアでのパワードリル使用に関する規則も尊重する。
  • ボルトの撤去や移動は、岩資源に与える影響は大きく、クライマー間の同意が得られるまでは行うべきではない。チッピングやグルーイングに関しては受け入れられない。
  • クライミングには、イクスパンションボルトやピトンなどの固定アンカーは必要であり、ながらくそれは正当な物として認められてきた。クライマーはそれらの正しい設置、交換、撤去の方法を学ぶ必要がある。設置に関しては合理的な手法で行い、岩資源への影響を最小限に抑える。ボルトはその場所の習慣にあわせて岩とカモフラージュされたものを用い(同色のハンガーを使うなど)、目立たないようにする。また、ナチュラルプロテクションが安全に設置できるのであれば、ボルトの設置は控える。
  • アクセス問題解決の近道は、地方のクライミング組織とアクセス・ファンドが一体となって取り組むことである。地方団体がない場合は、アクセス・ファンドが直ちに組織作りの手助けを行う。
  • 責任を持ってクライミングを行おう。そして、クライマーだけでなく、地主や土地の管理者、クライマー以外の使用者にも敬意を払おう。閉鎖地区や私有地には侵入せず、何かアクセス問題に関して疑問点があればアクセスファンドか地方のクライミング組織に聞いて欲しい。

6.寄付金

活動内容に賛同し募金を行う場合は、次のように寄付金の基準額が決められている。

個人メンバー
ビレイヤー$30
リーダー$50
初登者$100
ガイド$250
学生/バム$20

また、企業、小売店、ジム、ガイドなどからは別枠で寄付金を募っており、DIAMOND PARTNERS($20,000以上)として、ブラックダイアモンド、ノースフェイス、REI、Climbing、Rock&Iceなどが並び、以下、寄付金$500まで75以上の団体が名を連ねる。

7. 最近の成果

1998年

1998年は著しい成長を遂げた年であった。会員は8500人まで増え、アメリカのクライミングをサポートするのに使われた費用は総額50万ドル以上に達した。

トレイルの建造、ダメージを受けた環境の修復、クライマーの啓蒙活動などに使われ た費用は8万5千ドルにおよび、これにはキャンプ4問題のヨセミテ国立公園当局を相手取っての訴訟費用、シティ・オブ・ロックスのツインシスターエリアの開放、フエコタンクスの開放運動のための費用なども含まれている。

1999年

会員は、1万人を突破。シェルフロードのカクタス・クリフが初めてクライマーに開放され、コネチカットのレジッド・マウンテンはクライマーが所有し管理することになった。

アクセス・ファンドは、他にも、ファルコンなど野生動物の保護とクライミングの共存、ネイティヴアメリカンにとって神聖とされる場所でのクライミング、USフォレスト・サービスの管理する原野(ウィルダネス)における固定アンカーの問題、などおよそ考えられる諸問題解決についてすべて明確な指針を示している。

岩場に打たれるボルトは、クライマー以外の人にとっては岩に打ち付けられたただの怪しい「異物」にすぎない。とはいってもクライマーにはやはり必要な物でもあり、だったら目立たなくするのがクライマー側にできるせめてもの「ミニマムインパクト」である。アクセス・ファンドもこの点ははっきりと「カモフラージュすべきである」と述べている。実際色が同じすぎてどこにボルトがあるのか下からではまったく分からないエリアも多い。

Free Fun #30 (2000秋号より)


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ボルト打ち替え人夫顛末記

杉野 保

大体において私の場合、以前からルートを整備するということがあまり好きでなかった。

なぜかというと、初登され、発表されて、作品としてルートが公になったものには、初登者のこだわりとか主張とかが感じられるまま、ボルトがさびようが、終了点がなかろうが、そのままの状態にしておき、そのルートにトライしたいのだけれどもボルトに不安があると感じた人が初めて、初登者に了解を取った上で打ち替えなどすればいいのではないかと思っていた。

今となっては、理解できない人の方が多いとは思うのだけど、私は終了点はなくてもいいとすら思っていた時代もあった(ここでいう終了点とはボルトアンカーなどの岩に残置した支点のこと)。

なぜなら、終了点は登るためには必要ないからだ。

私がクライミングの影響を受けたのは、どうしてもヨセミテで、そして実はジョシュアツリーなのでもある。ジョシュアにはルート中、登るために必要な本当に最低限の残置物しかなかった。ナチュラルならその岩には何もなかった。終了点もない。岩の頂上には木もない。大体ナチュプロで終了点を作り、フォローしてもらうか、ロワーダウンで回収したりするのだが、ではその終了点はどうするかというとその岩塔の他のやさしいルートを再度登って回収し、そのルートをクライムダウンするのである。とまあ恐ろしく面倒くさいことをしていたわけだが、でもこれが妙に気持ちいいのだ。今登ったこの岩には人が登った痕跡が全く残らない。

だから私のルートは自分の事しか考えず、どうしても最低限の物資で作られている場合が多い。

そんな私が幕岩と城ヶ崎の整備をしようなどといいだしたものだから、D助はそれは驚いていたようだ。

私が整備をする気になったのには訳がある。

まず第一に時代は流れているということだ。スーパーイムジンの最後のボルトはどうしてもうち変える気になれないが、上から開拓されたルートなら、ボルトは新しくて頑丈なのに越したことはない。つまりグラウンド・アップで打たれた訳でもないのにその貧弱なボルトを使い続ける理由はないということ。それにレッジ・トゥ・レッジのクライミングの発想どころか意味も薄られてしまった今、終了点のないルートはルートでないといっても過言ではなくなってしまった。

二つ目として、鳳来での美化活動に少しだけだが関わって、ルート整備(美化)の意味と必要性をあのような方向からも再認識し、カモフラージュされたボルトときれいな終了点を見て妙にスッキリした気分になったこと。そしてやはりJFAの他メンバーによってほとんどケミカルに打ち変えられた城山南壁を見て、それまで感じていたボルトの違和感を感じなくなったこともある。岩場再生という言葉がぴったりだった。

第三に、自分が講習会で使っているエリアでもあるわけだし、私のような職業の人はすすんでやらなければいけないことだと今更ながら思ったこと。講習会をしながらいつも思っていたこのグチャグチャな汚いスリングの終了点早く何とかしなきゃの思いは、今は岩場のノーモア・スリング運動につながっている。

そして最後に自分も変わった。スティッククリップも投げ縄ならOK。こうやって人は時代に流されていくものなのですね。ジョン・バーカーは今でもジョシュアの終了点を抜いて歩いているのだろうか(わけないか)。

さて、というわけで何日かD助と幕岩、城ヶ崎の整備をおこなってきた。しかしこれはまだ始まったばかり。城ヶ崎などほとんど手つかずのままであるが、気になったことをいくつか書いてみたい。

シーサイドや二子、鳳来のように、ある程度フリークライミングのことが分かっている人が行く岩場なら何の問題にもならないようなことが、幕岩ではおこっている。

対物ビレイ全盛の頃、リングボルト1本で対物ビレイしていた輩に注意した藤原雅一氏が、「アルパインやったこともない人にそんなこと言われたくないね。」と罵られたというのは有名な話だが、そんな時代にくらべればここやJ山での生と死の分岐点博覧会状態は激減したものの、それでもやっぱり終了点のビナは持って行かれてしまうんですね、これが。ひどかったのは幕岩の「蟻さんルート」周辺の終了点だ。

整備1日目に終了点をチェーンタイプに交換し、カラビナ2枚をとりあえず残置。その3日後再び訪れるとその間は平日だったにもかかわらずきれいさっぱりカラビナはなくなっていた。まあ予想はしていたけどこんなに早く無くなるとはなと思いつつ、今度は終了点の一部であることを強調すべく結束バンドできちきちに固定し、ヤマタケ作製の注意点を記したカードをチェーンにつけた。今度は大丈夫だろうと新しいロックビナを残置。しかしその一週間後、そのロックビナもあっと言う間になくなってしまったいたのである。このときのD助の落ち込みようといったら無かった。私もこの日は整備する気が失せた。

結束バンドから強引に抜き取ったあとを見ると間違って回収したとかは考えられない。あきらかに盗ろうとして盗っている。だったらいっそのことFIXEのチェーンごと持っていけばいいのにと思うがそこまではやらないようだ(やらないか普通)。

このビナや終了点は、みなさんの会費で買ったものだ。それが、当然会員ではないであろう誰かによって持ち去られるというのはまったくもってやるせない気持ちになる。

それからやはり気になるのが、終了点リング直がけトップロープ軍団だ。これは、カードを付けなかったJ山ではかなりの人がやっていた。まあ、そうすればいつでも回収できるし気持ちはわかるけど、リングは減るし、他ルートと共有の場合とかロワーダウンできないわけだからやめましょうね。でも、これ読んでる人はすでにそんなこと百も承知なんだよね、読んで欲しい人ほど読まないんだよな、FFみたいなこういう雑誌って・・・

終了点のセットは難しいことは何もない。それぞれのハンガーにヌンチャクを1本ずつかけてロープを通すだけでいいのだ。よくわからないのが支点を自分で作っておきながらも、リングにも通しちゃってる人。リングや残置ビナは最後に回収するとき以外は空けておいて下さい。

さあ、というわけでルート整備もまだ始まったばかり。最近整備したルートは別紙の通りだが、まだまだほんの一部。これから城ヶ崎や小川山、そして鳳来と手をひろげていかなければならない。

Free Fun #32 (2001春号より)


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