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IFSC "RULES2014" 主要変更点

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* IFSCルールの2014年版が発表された。昨年は小規模な変更に留まったが、今年は細かなところで重要な変更がいくつか見られる。

* また、今年だけなのか今後もそうなのかわからないが、変更点をまとめた文書“Summary of Changes”が公開されていて、変更点の確認が容易になっているのはありがたい。ここではそれに沿って共通部分、リード、ボルダーの変更点を解説する。ただし、この変更点の要約は、変更の全てを網羅していない。例えば、リードの7.9.1〜3は項目の順序が入れ替わり、さらに文言の大きな変更もあるが記載がない。ただこの部分は全体の趣旨に変更があるわけではなく、入れ忘れたのか、趣旨に変更のないものは省略するという考え方なのかは不明である。

第1部 競技の管理

3.総則

3.4
  • ユニフォーム関係の規定で変更があった。記述の整理があったほか、内容的な変更は、上衣だけでなくレグウエアについても各チームで統一することが求められるようになったこと、「デザインマーク」=袖口やレグウエアの側面などにつけられた帯状のブランドロゴについての規定が加わったことの2点。

4.罰則規定

4.2
  • 従来選手に限定されていた記述が、選手以外の選手団メンバーも包括する表現に変わっている。
  • 4.2.9でBMI検査の拒否に関する規定が追加された。大会中にBMI検査を実施することがあると言うことだが、この検査実施の根拠となる文言はルールには見当たらないが、日本チームのチームマネージャーである千葉 和浩氏によると、無理なダイエットがユース選手の健康に与える影響を考えてのものとのこと。具体的には、準決勝進出選手について測定をおこない、そのデータを記録。特定の大会で、以前の記録に比べ不自然な減少が見られた場合に検査を求めるという対応のようだ。
4.3
  • 選手以外の選手団役員への制裁に関する規定が追加された。

第2部 テクニカル・ルール

リード

6.4
審判及び判定
  • 6.4.1で従来、成績判定をおこなうのはルートジャッジとされてきたのが、決勝についてはIFSCジャッジもともに判定にあたることとされた。国内資格しか持たないルートジャッジを信用しないと言うことか、IFSCジャッジ自身が判定にたずさわっていれば抗議があった場合に素早い対応が可能と言うことか、いずれかの理由だろう。
  • また、従来ノーマルとプラスの境界に関して、IFSCジャッジの判断=裁量を認めていた6.4.5が削除された(正確には、6.4.5に“Not used”と言う文言が入っている、というイレギュラーなかたち)。だが現実問題として、一定の裁量=審判員ごとのずれがあるのはやむを得ないだろう。
クリップに関するレジティメイトポジション
  • 6.4.4に付記として「レジティメイト・ポジション外でおこなわれたいかなる登攀動作にたいしても「プラス」が与えられることはない。」という文言が加わった。
    「青十字」のつけられたホールドを含め、未クリップのクイックドローに関するレジティメイトポジションを行き過ぎてしまった後のムーブは、これまでも評価しないとされてきた。しかし、レジティメイトポジションの最後のホールドを保持した状態でのムーブを評価するかどうかは、明確ではなかった。そこで国内ではこれまで、ルールに記述がない以上、レジティメイトポジションの最後のホールドを保持した状態でのムーブは、評価せざるをえない、という立場を取ってきた。
    今回の「「プラス」が与えられることはない」という表現から考えると、レジティメイトポジションの最後のホールドでのムーブも評価しない、と理解すべきようだ。
    これは、それを認めれば選手が未クリップのまま突っ込む可能性があって危険なこと、またクリップをすることで消耗しそこでフォールした選手より、クリップせずに突っ込んだ選手が上位になるのは理不尽だということではないかと思う。
6.9
クリップに関するレジティメイトポジション
  • 6.9.3の未クリップのままどこまで登ることが認められるかについての表現が、変更になっている。
    「i)選手の身体の全てが次の未クリップのクィックドローの下側のカラビナを越えていない」は従来のままで、もう一つの「ii)選手が(最後にクリップされたクィックドローの)次の未クリップのクィックドローに(そのクィックドローを足で引き上げたりすることなく)、手で触れることができる」が次のように変わった。
    ii)選手の身体の全てが次の未クリップのクィックドローを越えていても、選手が以下の状態にある:
    1. 同じカテゴリー/年齢別グループの他の選手が、足でクィックドローを引き寄せることなくクリップ可能であることを示している
    2. その状態から未クリップのクィックドローにクリップ可能であるとチーフ・ルートセッターが判断した
    最初の条件の趣旨としては、選手間のリーチ差を考え、最もリーチの長い選手を基準に考えようとのことだろう。2番目のチーフルートセッターの判断というのは、結局大昔に戻っただけではないか?とも思える。
ハリボテのホールド取り付け穴
  • 6.9.9のボルトオンホールドを取り付けるための穴の使用禁止の規定で、変更がある。これはボルダーでも共通な変更だ。
    この穴の使用禁止は、従来は「クライミング・ウォールに」あけられた穴ということで、ハリボテにあいているそれについては規定がなかった。ボルダリングでは、クライミングウォールの穴はダメだが、ハリボテの穴は使用可能とさえ言われていたこともある。
    しかし昨年の“Judge Manual”には既に、ハリボテの穴も使用禁止の文言が見られ、今年の改訂でルール本体に禁止が盛り込まれた。文言的にはアテンプト中止になる要件の1つとして、従来が“Uses with their hands, holes provided in the climbing wall for the placement of bolt-on holds”だったものが、“Uses with their hands, holes provided but not used for the placement of bolt-on holds”に変わったのみで、“in the climbing wall”が消えただけなので見落としがちだが、“Summary of Changes”には“Disallow use of bolt-holes on volumes (as well as the wall itself).”とあるので、ハリボテの穴も使用禁止で間違いない。
    しかしこれは、審判の負担増以外の何物でもない。壁の上部に取り付けられたハリボテのホールド取り付け穴を使ったかどうかの判定など、以前のマイナス判定以上に微妙なケースがあり得るのではないだろうか。
  • さらに"Judging Manual"によればこの「穴」は、従来はクライミング・ウォールに開いている方の穴のみと理解していたのだが、ボルトオンホールドの取り付けボルトを通す穴も、そこにボルトを通していない場合は含まれることになった。。
    これはボルトオンホールドをボルトを使わずに、スクリューオンホールドと同じように木ねじだけで固定した場合である。その場合そのホールドのボルトを通す穴は使用禁止になり、ルートセッターはその穴を埋めておく必要があるとされている。最近はホールドメーカーの方でも、この穴を埋めるためのパーツを出しているところがある。
6.13
抗議
  • 成績についての抗議の締め切りが、条件を問わず予選と準決勝はオフィシャル・リザルト発表後5分に統一、決勝はその選手の成績発表後ただちに、と言う形に変更になった(6.13.5)。また手続きなどにも変更があるが、文言の整理、順序の組み替えが主で、国内大会に影響するものではないので、ここでは省略する。

ボルダー

7.2
スタートホールドの指定
  • 7.2.5のスタートホールドの指定だが、フットホールドが両足とも必ず指定することに変更になった。これは推測で具体的なところは不明だが、いわゆる「地ジャン」スタートに関連した混乱があり、それに対応するためという可能性がある。
7.4
審判及び判定
  • 7.4.1で、リードの6.4.1と同様に、決勝についてはボルダージャッジだけでなくIFSCジャッジ及びジューリ・プレジデントも判定にあたることになった。ボルダーの決勝は男女同時進行が原則なので、IFSCジャッジ1人では対応できないから、ジューリ・プレジデントまで引っ張り出すのだろう。
  • 7.4.2で、ボーナスホールド認定の基準が加わった。基本的にはリードの6.4.4a)と同じ内容と考えて良い。
    ボーナスホールドは選手がそのホールドを安定した、あるいは制御された体勢を獲得するために 使用したときに保持したと見なされる。
7.9
スタート
  • 従来の7.9.3が7.9.1に、7.9.2が7.9.3となり、7.9.1が文言を変更して7.9.2に入っている。
    新しい文言は「地面から離れた後、それ以上のムーブをおこなう前に、選手は7.2.5の規定に従ってマーキングされたスターティング・ポジションにつかなければならない。」である。
    全体としての趣旨が変わっておらず、冗長な表現を簡潔にしたという印象だ。
ハリボテのホールド取り付け穴
  • リードのところで述べたように、ボルダーでもハリボテにあいたホールド取り付け穴は明確に禁止となっている(7.9.5)。
7.13
抗議
  • 7.13.4で、アテンプトに関する判定(例えばスタートの失敗に関する誤判定など)への抗議は、承認された場合、テクニカルインシデントを被った場合と同じ扱いになる旨が追加されている。
    それ以外はリードの6.13と同様、文言の整理、順序の組み替えが主であり国内大会に影響するものではないので省略する。

(2014/03/09、 03/12 追加訂正、11/21 追加)


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