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IFSC "RULES2012" 主要変更点(速報)

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* IFSCルールの2012年版が発表された。予想外の改定がおこなわれた昨年に続き、今年も大幅な変更がおこなわれている。この頻繁な変更の理由は、“オリンピック”であろう。ご存じの通り、クライミング競技は2020年のオリンピックで正式種目に採用される可能性がある。この機会を逃せば、その次はいつになるかわからない。IFSCとしてはオリンピックの採用に向けて、出来ることはすべてやる方針のようで、この連続するルール改定も、オリンピックに相応しい(採用されやすい)競技にするためのものと考えて間違いないだろう。

* とりわけ大きな変更はスピードに見られるが、リード、ボルダーの規則についても重要な変更は多い。未だ十分なチェックを終えてはいないが、リード、ボルダーの大きな変更点を簡単にご紹介したい。

リード

*リードでの変更点で大きなものは何と言っても、成績からタッチ(=マイナス)がなくなったことだ。これまでのマイナスに相当するものは下のホールドのプラスとなる、と言うことだ。

* これは運営上の都合によるところが大きい。国内の例を見ても、事後のビデオ判定の7割以上はタッチかどうかが微妙なケースの判定である。タッチの概念そのものがなくなれば、そうした判定をおこなう必要はなくなり、運営が速くなるということだろう。

* 無論、タッチと保持の境界線の判定というのもあるわけで、選手のパフォーマンスのどこからを保持とするかの微妙な判定は残るが、触ったかどうかの判定よりは問題が少ない。微妙な判定で審判が悩み、選手が泣くよりはいっそ無くしてしまった方がすっきりはするが、かなりの英断と言えるだろう。

* 従来のプラスとマイナスが同じ扱いになるのだから、当然同着は増える。そこで、決勝で確実に順位差をつけるために考えられたのが、決勝での時間記録の導入である。

* 以前は1位に同着があった場合は、原則スーパーファイナルだったが、昨年から選手権大会ではスーパーファイナルをおこなうが、ワールドカップではスーパーファイナルを廃止して、同着扱いとなっていた。

* それが今年は、全ての大会で決勝で同着があった場合は、1位に限らず時間で決める――高度記録が同じでカウントバックしても差がつかなければ、決勝の所要時間が短い方が上位――と言うことになった。これまでのスーパーファイナルの考え方を決勝に持ち込んで、スーパーファイナルをルールから無くしてしまったわけである。

* 同じルートを使うにせよ、スーパーファイナルには時間がかかる。ましてスーパーファイナルで、両名完登で時間で決着というのでは、観客としても白けてしまうところがあるだろう。またワールドカップでも、決着をつけられるならつけたいのは確かだ。

* この決勝の時間記録の導入と、マイナスの廃止はペアで考えるべきだろう。マイナスの廃止で同着が増える分を、決勝で時間記録を使って確実に順位をつけることで、埋め合わせているのである。

* リードでもう一つ大きく変わったのが、テクニカル・インシデント後の回復時間だ。従来、使用したホールド1つあたり2分、最低20分だったものが、ホールド1つ当たりが1分、最長で20分と短くなった。2003年までは最大20分だったので、昔に戻った形になる。これも競技進行のスピードアップのための変更だろう。

* この他、ルール本体ではなく、審判員用に作成されている“Judging Manual 2012”という文書で、今まで明確でなかった部分についての見解が出ている。この中で重要な2点をお知らせする。

* まず、クリップ時のレジティメイト・ポジションに関連して、未クリップのクィックドローに手で触れられる範囲という改定が昨年おこなわれた。このレジティメイトポジション内で最後となるホールドでのムーブは、これまで国内ではその状態はレジティメイトポジションなので、評価してよいと考えてきたが、評価しない、ということが明示された。従って、クィックドローに手で触れることのできる最後のホールドのプラス、それよりも先のホールドの保持は認められなくなる。青十字のついたホールドについても同様である。

* 次に、選手の競技時間の計測開始のタイミングだが、あくまで選手の身体の全てが地面から離れたときである、とされた。すなわち最終オブザベーションの40秒が経過した後であっても、選手が登り始めるまで計時を開始しない、と言うことになる。


追加

* 一見小さな変更なので触れなかったのだが、オンサイトのラウンドのアイソレーション・クローズが、そのラウンド開始の1時間以内となった。これまでは、前のラウンドが終了後にただちに選手を隔離していたが、それをしてはいけない、と言うことだ。

* このため選手は、競技会場そのものが封鎖されていない限り、アイソレーション・クローズまでルートセット作業を見ていて良い。また準決勝の場合も、会場がオープンされていれば、完成したルートを見ることができることになる。

* 考え方としては、オンサイトでも選手にあたえる情報を極力少なくすることに努めるのではなく、イコールコンディションであれば情報を与えてもよい、と割り切って考えると言うことだ。極端な話、ルートセット完了まで選手を会場内にいさせて、そのままオブザベションをさせて、即競技開始(最初の選手以外はアイソへ)という形もあり得ると言うことである。さすがに国際大会では出場者の把握、管理の点でそこまでは無理かもしれないが、ローカルな大会ではやりかたとして考えても良いのではないだろうか。

ボルダリング

* ボルダーでは、まず足のスタートポジションがオプションになった。これまでは最低限、片足のスタートポジションは指定しなければならなかったが、今年からは手のみの指定がありうる。極端な場合は、手のホールド指定のみで、一切フットホールドのついていないスタートも考えられる。

* 同時に、壁への棒状のテープマークのみによるスタートマーキングが禁止された。従来のように足のスターティングポジションを、何もない壁面にテープ1本貼って指定することはできない。指定するならホールドをつける、もしくは一定の範囲をテープで囲む、ということだ。なおこれは原文では単に“start”についての言及なので、足に限らず手についても同様だ。カンテをスタートに指定するなら、使用する範囲を囲まなければならない。

* そして両足の指定がある場合のスターティングポジションは、そのうちの一方に片足を置けばよいことになった。ただし、両足がスターティングポジションに置かれる前に、それ以上のムーブを行うことはできない。実質的には、スターティングホールド以外に触れたらそこでストップという運用になるだろう。

* さらに、地ジャンでのスタートが認められるようになった。スターティングホールドに手が届かない場合には、ジャンプしてとりついても良い。もちろんジャンプで失敗したら、1アテンプト取られる。

* ただ、これで気になる点が一つ。そうした高い位置のハンドホールドと、それを取った状態で身長のない選手には届かないくらい低いフットホールドがスタートポジションとして指定されたら、スタートそのものが不可能になる。まさかそんな課題は作らないとは思うが。

* ともあれボルダーのスターティングポジションの規定は、今までは何となくすっきりしない記述だったが、これで相当解消されたと言える。

* この他、スーパーファイナルの名称がTie-Break boulderに変更。これは名前が変わっただけ。要はリードでスーパーファイナルが完全になくなったからだろう

* ボルダーの変更点の多くは、選手への影響は無論、ルートセッターへの影響も大きいだろう。また噂のあった予選のフラッシュは結局導入されなかった。ボルダーの予選をフラッシュ(と言うか実態としてはセッション)でやったら、選手が壁の前にたむろして、観客不在になるのは目に見えている。そのあたりの問題をクリアしないと、国際大会のセッションは無理だろう。ボルダーについてはその他、ファイナルで日本で言うサドンデスのような形式の導入も検討されていると言う。来年もまた大きな手直しがあるのかもしれない。

* なおボルダーについても“Judging Manual 2012”に、新しい文言がある。

* 従来は選手のスタート時にボルダージャッジからスターティングポジションや、ボーナス、ゴールについての説明をおこなうことがあったが、今後は選手から聞かれない限り、そうした説明はおこなわないことが明記された。これは選手への説明に「ぶれ」があった場合にテクニカル・インシデントの可能性があるからではないだろうか。


追加

* 「地ジャン」スタートに関連して、単純に地面(マット)の上から直接飛びつくのではなく、一度フットホールドを蹴って飛びつくケースがある。

* ルール上の解釈としては、従来は必ずフットホールドの指定があったが、それが無くなった。このため、足のスタートホールドが指定されておらず、ジャンプ後=身体が地面(マット)から離れた後は、7.9.3の規定でアテンプトは開始しているため、スタートホールド以外に触れることは可能と考えられる。

* さらに、ハンドホールドについては、アテンプト開始以後であれば、その保持以前にスタートホールド以外のホールドに触れてはいけないという規定は見当たらない。従って、足のスタートが指定されていなければ、ジャンプ後にフットホールドを蹴ってスタートホールドに飛びつくようなムーブが設定可能と言うことになる。

* ただし片足が地面に残った状態で、蹴るためのフットホールドに触れた場合は、7.9.5 a)のスタートの失敗になる。なお、蹴るのがホールドではなくハリボテの場合、それを壁の一部と考えれば、何の問題もなくなる。

追加2

* このハリボテについては、もう一つ問題がある。多くの場合、ホールド取付け用の穴が空いている。クライミングウォールのホールド取付け用の穴は、ボルダーの場合も7.6c)の規定で手での使用は禁じられているが、最近の国際大会ではハリボテに空いているものは、使用しても良くなっているという情報がある。ハリボテの場合、例え使っていても審判から確認ができないことが多いと言うのがその理由ではないかと思われる。ハリボテは、壁の一部とも独立したホールドとも解釈できるあいまいなオブジェクトなので、ルールの解釈上は、そのハリボテは壁の一部ではなく、ホールドであるという理解で使用を許しているのだろう。

* しかし実際ボルダリングでは、このホールド穴の使用を禁止する根拠はないと考えられる。いっそのこと、ボルダリングではオープンにしてしまっても良いのではないだろうか。

(2012/03/08)
(03/09、03/14、03/30 、04/20、04/25、08/15、09/04、11/06 加筆)


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